198.2 第187話【後編】
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瓦礫が散乱し、崩壊したフロアの中にもかかわらず、アパレルショップのディスプレイが無残に残っていた。その中に、ミリタリーショップが偶然にもあった。
椎名はその店内で服を物色し、迷彩服を手に取った。雨に濡れたシャツを脱ぎ捨て、軍人らしい出で立ちに着替えていく。
鏡に映る自分の姿をじっと見つめる。その姿はまさに彼の本質――戦場に生きる者そのものだった。
「やはり、しっくりくるな。」
彼はふと何かを思い出したかのように呟く。
「仁川さん…?」
「仁川さっ…!」
「椎名!」186
声が脳裏をよぎる。
「あのとき…俺の名前を呼んだ気がしたが。」
椎名は姿見に映る迷彩服姿の自分をもう一度確認し、口元に不敵な笑みを浮かべた。
「さて…。」
ベネシュには特殊作戦群との交戦を命じている。両者が正面からぶつかれば、いかに特殊作戦群が精強な部隊であろうとも、何らかの被害は免れないだろう。
「いくら歴戦の猛者でも、力が拮抗すれば互いに削り合う。そうなれば、消耗戦に持ち込むだけだ。」
創設された特殊作戦群の初戦。ここで彼らが大きな損害を被れば、日本政府の中枢に動揺が広がる。
「政府内にはすでに不満分子が潜んでいる。彼らは特殊作戦群の損耗を口実に、現政権の足を引っ張り始めるはずだ。」
その不満がさらに広がれば、内部での不協和音が助長される。そして混乱がピークに達したとき、次の段階に移行すれば良いだけだ。
「皆殺し…