第12話

3-12.mp3 充電ケーブルに繋がれた枕元のスマートフォンを軽くタッチすると時刻が表示された。 午前5時である。 椎名はそれを手にしてベッドから身を起こした。 そのまま彼は部屋の電気をつけることなく、着替えを手にして風呂場に向かった。 シャワーの音 ー新幹線のあれが何者かによる何かの実験のようなものって線はだれだって思いつくし、実際それっぽいこと言ってる奴は既にいる…。だがどれもがざっくりとした観念的なもんだ。そんなものは別に問題じゃない。 ーだがKの見立ては違う。 ー今回撒き散らされたのは人糞。その量は一度の排便によるものとは思えない量だった。これが示すのは2つの可能性。ひとつははじめから撒き散らすつもりで外部からそれを持ち込んだ可能性。もうひとつは二人以上の人間が別々の場所で排便した可能性。後者の場合、便所じゃない場所で排便をすることになる。排便には一定の時間を要する。そのため人目に触れないようにそういった行為をするのは、他人から目撃されやすくリスクが大きい。できることなら避けたいはずだ。となると前者の外部から持ち込んだ説をとるのが有力だ。 ー外部から持ち込んだとすると、これは重要な意味を持つことになる。少なくとも現在の日本の鉄道においては基本的にどんなものでもノーチェックで持ち込みが可能であるということだ。 ー正解だよ。正解。人糞ってのは臭いがする。俺らはこの臭いに対する周囲の反応を知りたかったんだ。無臭の神経剤は周囲のどれだけの人間に影響を及ぼすか、出たとこ勝負さ…

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