第33話
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都内某所。
ある喫茶店の中をハンティングスコープで覗き込む者がいた。
「しっかしヤドルチェンコの奴、ひとりでこんな夜に誰に会うでもなく、携帯使って何やってるんでしょうかね。」
「しかも喫茶店。わかんねぇわ。俺だったら家で引きこもってるか、せめて居酒屋だけどな。」
「あ、動いた。…会計している。…ん?…あれ?何か渡した?」
「なに?」
「現金を払うときに店員になにか渡したように見えました。」
「店員の動き追ってくれ。」
「はい。」
「指揮所からフタ番。」
「こちらフタ番。」
「対象が店から出たら入れ違いで入店し、店員の持ち物を改めてくれ。対象からなにか小さなものを手渡された可能性がある。」
「了解。」
「店から出ます。」
背広姿の男二人が店から出てきた白人男性とすれ違うように入店した。
ドアがカランカランと鳴る
「いらっしゃいませ。」
「警察です。」
対応の店員の目の前に警察手帳が見せられる。
「公安特課です。あなたの持ち物を改めさせてもらいます。」
「え?公安特課?」
「お店に迷惑はかけません。すぐに終わります。」
「いま、ここでですか?」
「はい。ポケットの中見せてもらいますか。」
「…。」
「もしもあなたが我々の依頼を拒否されるようでしたら、お店の責任者の方に事情を説明して、ご協力を仰ぎます。」
「ま、待って…。」
店員はポケットからUSBメモリを取り出してみせた。
「それだけですか…