第38話
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相馬は石川大学病院の外来窓口にあるソファに座って本を開いていた。
「東一病院時代の光定の机の中には人間の目の写真がぎっしり。鍋島の特殊能力発動条件はやつの眼力。曽我の裏方として鍋島の特殊能力の分析をしとった光定はどうやらそれには気がついとったみたいやな。」
「しかもその写真には気分が高揚するなどの妙な力があった。光定は鍋島能力の再現を図っているのかも。」
「もしもその鍋島能力の再現がすでにできとって、その精度を上げる段階に入っとるとしたら、あいつが山県と直接接触するのはなにかの意味があることなんかもしれん。」
「とは言え、そんなことを理由にいきなり光定周辺にガサ入れってのも無理ですし。」
「そうそう。特高からケントクに相馬捜査官レンタルの書類が正式に届いたみたいやし、おまえ光定調べてくれんけ。」
「え?」
「あれ?聞いてない?」
「はい。ケントクの課長には班長から話し通しておくってだけで…。」
「あらそう。ワシはケントクの課長から直々に言われたけどな。」
「なにを?」
「相馬捜査官と極秘裏に捜査を進めよってな。」
「118番の番号札をお持ちの方、診察室へお入りください。」
呼び出された患者がゆっくりと立ち上がった。
それ誘導するように患者に付き従う一人の看護師がいる。
「とにかく光定に近い奴をこっち側に引っ張り込む。それが一番手っ取り早い。」
「って言っても、自分には光定周辺の情報がありません。」
「それはこっちで準備した。…