第46話

3-46.mp3 「え?古田さんが?」 「あぁ、天宮のヤサで聴取しとったところ、あまりにもしつこいとかでPSに苦情が入って、PMが乗り込んだらしい。」 「本当ですか…。」 岡田ため息をつく。 「しかし古田さん、天宮の聴取って…。ここで随分思い切った行動を取りましたね。」 「だな。それで収穫があればいいんやけど」 「まぁ…。」 「何事にも慎重を期するあの人らしくない。何か焦っとるようにも思えるな。」 「不要な予算をマルトクに付けとる。なんて大蔵省が評価したら、せっかく充実させた安全保障関連の予算も見直しが必要とか言って、あいつら至るところにメスを入れかねん。」 「もしもそうなると安全保障予算を引っ張ってきた族議員は、その顔を潰されることになり、ひいては関係業者、団体の期待を裏切ることとなって、票を失うなんて心配もせんといかんくなる。」 「政治家と大蔵省の睨みがきつくなった警察は、世論という勢力を味方につけるため、彼らが最も納得する対応をする。それがツヴァイスタンやウ・ダバをとにかく取り締まれというもの。ここに乗っかって政治家と大蔵省からのプレッシャーを切り抜けようと考えた。」 「なんねんてそれ…。そもそもマルトクはそういう他からの干渉をなくして治安維持活動に専念できるようにって目的で設立された部署やぞ。」 「でも金がなくなればウチらは干上がります。」 「目に見える成果…か。」 「はい。」 「…しかもはよせんといかん訳やな。」 「おそらく。」36 …

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第45話

3-45.mp3 「で、どのタイミングで…。はい。了解しました。あぁ椎名ですか…。あいつは相変わらず何の動きもないようです。…確かに油断は禁物ですね。で、例の件は…なるほどこちらにお任せいただけるんですね。」 電話を切った古田はポリポリと頭を掻いて帽子をかぶり直した。 その帽子には大手配送会社の会社ロゴが刺繍されている。 「さてと…。」 インターホンを押す音 「はい。」 「宅配便でーす。」 玄関ドアが開かれた。 「天宮憲行(のりゆき)さん?」 「はい。」 「警察です。」 「え?」 すかさず古田は自分のつま先を玄関ドアの開いたところにねじ込んだ。 まるで昭和の押し売りのような強引な振る舞いに天宮は言葉を失った 帽子を脱ぎ、胸ポケットから警察手帳を取り出した古田はそれを彼に見せた。 「光定公信さんについてお聞きしたいことがあります。ご協力いただけますか。」 「…ありえない。なんて乱暴な。」 「私は法を犯すようなことは一切行っていませんよ。」 「…取り込み中です。日を改めてくれませんか。」 「何を待ってたんですかね。」 「何のことですか…。」 「何か待ってたんでしょ。ほやから宅配便の受け取りにあんたが直接出た。」 「家には私しかいません。」 「あれ?奥様は。」 「もうここにはいません。」 「あぁ…そうですか。それはそれは…。」 玄関先で話し込む古田の様子を怪訝な様子で見る隣人の姿が、天宮の目に映った。 …

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第44話

3-44.mp3 「って…。ってぇよぅ…。」 助手席で頭を抱えて消え入るような声を発するのは朝戸慶太である。 「立って歩けるか。」 「無理…。」 「ふぅ…じゃあちょっと待ってろ。」 「待って、置いていかないで…。死んじまう。」 「5分だけ我慢しろ。」 「待てよ…さっき10分我慢しろって…。」 「できるよな。」 空閑は車を出て走っていった。 自身の鼓動に合わせて頭に激痛が走る。 この頭痛には血流が影響しているのは素人でもわかる。 しかしなぜそれが頭という部位だけに起こるのか。 などとつまらぬ原因究明の思考をするも、それがためか痛みが激しくなった。 「あ…もう無理…。」 瞼によって閉ざされた彼の視界は暗闇から白みがかったものに変わった。 車発信した。 助手席の朝戸は窓から鼓門を見上げた。 「ビショップ。」 「うん?」 「さっきグロテスクで街にそぐわないって言ってたよね。この門。」 「…。」 「でも結果的に大衆に支持されてるみたいだから、これは正解なんだって。」 「ああ…。」 「正解かどうかは他人が決めることじゃない。自分が決めるんだと思うよ。ビショップがグロテスクだと思ったならそれはグロテスクなんだ。他人が評価しているから良いものだとは必ずしも言えない。」 「…。」 「別に金沢ディスるわけじゃないけど、ガラス張りのドームみたいなものと木造のへんてこな和風の門。正直微妙だと俺は思った。」 「そうか…。」 「…

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第43話

3-43.mp3 自販機の音 缶を開けて飲料を飲む 「相馬…?」 三波は手にしていたスマートフォンをポケットにしまった。 そしてベンチに座って缶コーヒーを飲む男をサングラスの中から見つめた。 ー間違いない。京子のやつ浮足立ってると思ったらやっぱり相馬がここに帰ってきてたんだな。 相馬は本に目を落としている。 ーそれにしてもあいつところで何やってんだ…。見舞いは基本午後からだから、え…まさかなんか病気でも抱えてんのかあいつ。 本を読んでいる相馬がこちらに気づく様子はない。 ー片倉は相馬が今この病院にいるって知ってんのかな…。まぁあいつのことだから、そんな事チクっても自分らのことに第三者が首突っ込むなって言うだろうな。 飲料を飲み干した三波はそれをゴミ箱に捨てた。 「相馬周。」 「え?」 自分の名前を呼ぶ声が聞こえて相馬は顔を上げた。 サングラスの男がそれを外した。 「あっ三波さん。」 「おう、覚えてた?」 「あ…はい。」 「久しぶりだね。」 「本当ですね。」 「どしたのこんなところで。」 「三波さんこそどうしたんですか。」 「俺?俺はちょっと知った人がここに入院しててそのお見舞いで。」 「あぁそうなんですか。」 「お前こそどうしたんだよ。」 「自分は…。」 手にしていた本を閉じた相馬は神妙な面持ちになった。 「すまない。ひょっとしてデリケートな部分に入り込んでしまったかな。」 「…いえ。…

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第42話

3-42.mp3 雨が降っていたため、外気は肌寒い。 車から降りた彼は後部座席においていたジャンプジャケットを羽織った。 「大学病院…。」 かけていたサングラスを少し傾けてそこから見える建造物を見た三波は 時折物陰に身を隠しながら、男の後を追った。 週明け午前中の石川大学病院の外来は混雑していた。 彼が付ける男は週明け午前の混雑する外来には目もくれずに、そのまま病棟の方へと向かった。 ー病棟って、誰かの見舞いか…。 病棟にある3機のエレベータ。そのうちのひとつに男はひとり乗り込んだ。 それが5階で止まるのを確認して三波もまた、そこに向かった。 エレベータの中の音 ー5階って何だ。 彼はエレベータの中に表示されている各階病棟の診療科を見た。 ー血液内科…。 エレベータを降りるとすぐそこにナースセンターがあった。 初めて来る場所であるため、三波の挙動がおかしい。 そのため彼はそこにいた看護師に声をかけられた。 「お見舞いか何かですか。」 「あ…はい。」 「面会は基本的に午後からですよ。」 そう言って彼女は立てかけられているPOPのようなものを指差した。 そこには『特段の事情がない限りの午前の面会はお断りします』と書かれていた。 「どちらさまですか。」 「え…。あの…。」 「用がないんでしたら出直してください。」 「すいません。」 三波は名刺を彼女に見せた。 「ちゃんねるフリーダム…?…

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