第44話
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「って…。ってぇよぅ…。」
助手席で頭を抱えて消え入るような声を発するのは朝戸慶太である。
「立って歩けるか。」
「無理…。」
「ふぅ…じゃあちょっと待ってろ。」
「待って、置いていかないで…。死んじまう。」
「5分だけ我慢しろ。」
「待てよ…さっき10分我慢しろって…。」
「できるよな。」
空閑は車を出て走っていった。
自身の鼓動に合わせて頭に激痛が走る。
この頭痛には血流が影響しているのは素人でもわかる。
しかしなぜそれが頭という部位だけに起こるのか。
などとつまらぬ原因究明の思考をするも、それがためか痛みが激しくなった。
「あ…もう無理…。」
瞼によって閉ざされた彼の視界は暗闇から白みがかったものに変わった。
車発信した。
助手席の朝戸は窓から鼓門を見上げた。
「ビショップ。」
「うん?」
「さっきグロテスクで街にそぐわないって言ってたよね。この門。」
「…。」
「でも結果的に大衆に支持されてるみたいだから、これは正解なんだって。」
「ああ…。」
「正解かどうかは他人が決めることじゃない。自分が決めるんだと思うよ。ビショップがグロテスクだと思ったならそれはグロテスクなんだ。他人が評価しているから良いものだとは必ずしも言えない。」
「…。」
「別に金沢ディスるわけじゃないけど、ガラス張りのドームみたいなものと木造のへんてこな和風の門。正直微妙だと俺は思った。」
「そうか…。」
「…