第50話
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時刻は14時。
外来患者の診察をひと通り終えた彼は、自分の車の中で昼食をとっていた。
パンを齧りながら彼は器用に携帯電話を操作する。
「一時はどうなることかと思った。けど流石だなクイーン。君が処方してくれた強めの薬が効いたみたい。」
「副作用は。」
「それも心配ない。直接その目で見てもらった。金沢自分癒やしの旅って当初の目的は果たされつつあるよ。」
「そう。よかった。」
「今日はこれからナイトが言ってた自分のルーツを探る的な場所一緒に巡って宿へ届けることにするよ。」
「宿はどこ?」
「それは言えない。」
「どうして。」
「直接会うだろ。」
「だめか。」
「何度も言うように、君とナイトが直接接触するにはリスクが有る。公安が嗅ぎつける可能性は排除したい。」
「ビショップ。」
「なんだい。」
「時間の問題なんだ。」
「え?どういうこと?」
「ナイトはもう長くない。すでに脳の状態は限界まで来てる。」
「ということは…。」
「自分で死を選ぶ。」
「まじかよ…。」
「ナイトには山県という特別な安定剤があったからここまでもった。」
「まて、今回わざわざ直接投与したんだ。効き目はあるんだろ。」
「朝戸慶太という人格の洗脳という行為自体が人為的なもの。それを制御、維持するためにさらに人為的な投薬。その副産物である記憶障害、人格障害をさらに人為的に制御。心のすべてを人の手で制御するというのは到底無理なもの。いずれ破滅はやってくる。」
「リミ…