第57話

3-57.mp3 「あ、俺だよ。トシさん。」 「理事官ですか…。どうしたんですかこの番号。」 「いろいろ人間不信でね。これからは今までとは別の番号からそっちにかけることにする。」 「え…となると、こっちはいちいち見慣れん番号に警戒して電話に出んといかんことになるじゃないですか…。」 「そうだね。」 「わかりました別の機種を用意しましょう。」 「あ、頼める?」 「はい。」 「助かるよ。」 「…で、どうでした?」 「課長、知らなかったよ。池袋も新宿も。」 「え?」 「外からの情報は遮断されてるみたい。監視の目も厳しいから本当に簡単に課長に説明した。車が群衆に突っ込んだとか、ヤドルチェンコ警戒中に一般人がが刃物を持って暴れだしたとかって。…もちろんウ・ダバとかツヴァイスタンの影がちらちらしてるって敢えて言ったけどね。」 「で課長は。」 「俺の目を見てすぐに分かったみたい。適当に合わせてくれたよ。」 「流石。」 「東倉病院、池袋、新宿。こいつらがウ・ダバとツヴァイスタンの共同戦線ってのはどうも弱いんじゃないかって。」 「どうして。」 「具体的な理由は聞き出せていない。なにせ監視が厳しいからね。でも雰囲気的には俺らの見立てと同じじゃないかな。我が国と友好関係を築こうとしてるツヴァイスタンが、いまこの日本にテロまがいのことをしても何の得もない。ウ・ダバにしてもそのリーダー格であるヤドルチェンコを特高が常時監視中。今のところ変な動きは見せていない。この現状を知ってて一連…

続きを読む

第56話

3-56.mp3 東京駅の新幹線のりば。その改札近くの柱に寄りかかって、ひとり佇む男がいた。 多くの人が行き交う場所で一箇所にじっと立つのは、何かの目的があってのこと。 大事な人の到着を待つであるとか、出発までの時間が妙にあるため、とりあえず足を止めて時間を調整しているかのどちらかの理由が考えられる状況だが、彼はどちらでもなかった。 彼は敢えてこの人混みの中にその身を置いていた。 「はい。」 「俺だ。」 「あっ情報官。」 雑踏の音が電話越しに聞こえる 「肩書はやめろ。他に聞こえる。」 「はい。すいません。」 「ったく…百目鬼…どこまでお前はうっかりさんなんだ…。よくそんなで理事になれたもんだ。」 「これだけ雑だから生き残ってるのかもしれませんね。」 「お前いまどこに居るんだ。」 「東京駅です。」 「なんでそんなところにいるんだ。」 「ちょっと野暮用がありまして。」 「あのなぁ…。」 「わかっています。目黒の件でしょ。」 「わかってんだったら、なんとかしろ…。」 「何とかって…人質事件は刑事部と機動隊のヤマです。え?陶さん。まさか目黒の人質、ウ・ダバとかと何か関係あるんですか?」 「いや…そんな話はこっちに入っていない。」 「だったら畑違いです。素人が首突っ込む話じゃありません。」 「ふぅ…。」 電話の向こう側からため息が聞こえた。 「あ、ありがとうございました。」 「いや別に。」 「おかげで松永課長と会えました。」 「…

続きを読む

第55話

3-55.mp3 「たった今入ったニュースです。」 テレビの人物がこう言うと、画面下に「大学キャンパスで立てこもり事件」の文字が表示された。 「今日、正午ごろ東京目黒区の大学キャンパスで男が人質をとって立てこもる事件が発生しました。現在警察は犯人の説得を試みていますが負傷者がでているようです。今日正午ごろ、東京目黒区にある大学キャンパスで、突然男が騒ぎ出し、刃物をもって暴れだしました。大学関係者がその場に駆けつけ、男を取り押さえようとしたところ、男はそれを振り切り、女性を人質にとって教室内に立てこもったようです。取り押さえようとした際、大学関係者の中に数名の負傷者が出ており、内、一名が現在重体であるとの情報も入ってきています。男が立てこもる教室内には人質に取られた女性以外に複数名の男女が閉じ込められているようで、現在警察では人質の解放を犯人に呼びかけています。」 「おいおい…なんだこれ…。」 テレビを見ていた黒田が唖然とした表情で呟いた。 それに側にいた三波が応える。 「…病院の中でノビチョク巻かれたり、車が群衆に突っ込んだり、無差別通り魔事件があったり、今度は大学で人質事件…。この立て続けっぷりは異常ですね…。」 「ノビチョクも車が突っ込むのも、通り魔もド級の事件。それが連発。どうなってんだよ東京は…。」 「それにしてもこうも次から次ですと、報道する側もその整理が大変ですね。」 「俺らみたいなネットメディアならニュース別に少数で随時更新で対応できる…

続きを読む