第58話
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「おい聞いたけ。今度は目黒の大学で立てこもりやって。」
「マジけ。」
「こうも立て続けってどうかしとると思わんけ。」
「あれけ、ツヴァイスタンとかの…。」
「さぁ分からんけど、ほれやったら大事やぞ。」
「連続テロ事件みたいな?」
喫煙ルームから漏れ聞こえる会話を耳にしながら椎名は鞄を担いで会社を後にした。
「現在MHK第一放送では東京目黒区で起こった人質事件の中継を地上波テレビ放送と同じ音声でお届けしてます。」
「社会部の氏家さん。犯人はなにやら妙なことを口走っているとかと聞いていますが。」
「はい。人質をとって立てこもっている犯人は当初から【日本を壊せとか潰せ】と何度も叫んでいるようです。」
「え?それは我々に向かって言ってるんですか?」
「わかりません。警察では犯人が極度の興奮状態にあるため口走っている言葉ではないかと考えているようです。」
「…はい…えーたった今人質事件に動きがあったようです。事件現場の大学キャンパス付近からお伝えします。」
「はい。先程、犯人に人質の解放を呼びかけていた警官が建物の中に単身で乗り込みました。現在現場はその様子を見守っている状況です。あ!女性です!人質と思われる女性が開放された模様です!女性が走って外に出てきました!ひとまず人質は開放されたようです!」
「伏木(ふせぎ)さん。中には犯人と説得にあたっていた警察官が居たと思いますが、その二人はどうなんでしょうか。」
「はい。二人の姿はまだここからは確認…