第75話【後編】
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「ヒェ~すげぇ雨…。なんなんだよ、昨日から全然止まないじゃん…。えっと…確か保険屋から粗品でタオルもらってたよな…。」
グローブボックスの中を弄るも、お目当てのものは見つからない。どうやら彼の思い違いのようだったようだ。エンジンをかけた三波はエアコンを付け、その風で自分の濡れた服と髪の毛を乾かすことにした。
「小早川干城(たてき)…か。」
三波の手の内には雨で濡れてしまったメモ用紙があった。彼はそれをエアコンの吹出口にあてがって乾かす。
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「あの…ちょっと初歩的なことを聞いていいですか。」
「なんです?」
「その、名誉教授って一体どんな役職なんです?」
石川大学病院の非常階段。
この踊り場で三波は看護師と落ち合った。
二人は人目を忍ぶようにそこで会話を続けた。
「名誉教授っていうのはうちの病院にとって功績があったと認められた人に与えられる称号です。名誉教授っていう役職があるわけじゃなくて、あくまでも飾り的なものです。」
「え?て言うと天宮先生は今はここで教鞭をとったりとかしていないってことですか。」
「はい。昨年の引退と同時に名誉教授の称号をもらったって感じです。」
「あぁ…そうなんですか。あ、でもやっぱり今回の事件については結構騒動になってるんでしょう、ここの病院。」
「はい。なにせ引退しても時々顔だしてましたからここに。」
「引退後も…ですか。」…