第72話

3-72.mp3 「わかった。木下の周辺には警護をつけさせる。」 「お願いします。」 トイレの音 トイレの水を流してそこから出ようとした時、相馬はこの空間にも貼られているポスターに目が行った。 ユニフォーム姿の女性がオフィスで出たゴミと一緒に腹の出た不潔な男たちを束ねてゴミ箱に捨てるという、若干ジョークめいた内容のデザインだ。画面の下部には白色の文字に赤色の枠で縁取りされたキリル文字が大きく配されている。 「Давай очистим…。掃除をしよう。」 相馬は苦笑いした。 「あれ?」 彼の視線はそのキリル文字の枠線に止まった。 キリル文字の枠線となる赤色を作り出している箇所は網点の集合体のようなもので色を作り出しているようだった。しかし、その網点の形状がどうも変だ。彼は顔を近づけてそこをよく見た。 「え…。」 日銀券の地模様がローマ字のNIPPON GINKOで構成されているように、この文字の赤の枠線もマイクロ文字で構成されているではないか。そこに書かれている文字が何なのかを知り、相馬は戦慄した。 「KILL JAP…。」 この無数の文字の集合体が掃除をしようという言葉の縁を型どっている。 動けなかった。 さっきまでコミカルにさえ見えたこのデザインの意味は180度変わってしまった。 「どういうことや…。まさか店の中に貼られとるやつも全部そうなんけ…。」 そう考えた瞬間、寒気立った。 彼は静かにボストークのトイレ…

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