第73話

3-73.mp3 「帰ってきたか…。」 部屋に返ってきた椎名の行動はいつもと変わらない。 台所の隅の定位置に手にしていた鞄を置き、一旦洗面所の方に移動。手洗いうがいをし、ふたたび台所に戻ってきた。 床に置かれた鞄からラップトップを取り出し、壁を背にしていつもの席に座る。 「お、さっそく何するんけ。」 椎名がUSBメモリをパソコンに刺すのを見て富樫は手元のキーボードに手をやった。 「ちっ…椎名のやつWi-Fi切っとるがいや…。」 ネットワークを経由して椎名のパソコンに侵入し、彼がなにをしているのかを探ろうとした富樫だった。 しかしその方法を取ることができないことを知り、彼は両腕を組んだ。 「ほうや…京子から貰ったデータやろあれ。本人に何のデータ渡したんか聞いてみれば椎名が何やっとるんかわかるがいや。」 富樫はBluetoothヘッドフォンを利用して、その場で電話をかけた。 「課長。富樫です。」 「なんだ。」 「椎名帰宅しました。」 「そうか。」 「いま京子から貰ったと思われるUSBを自分のPCにぶっ刺しとります。けどWi-Fi切ってあるんであの中にはいれません。」 「そうか…。」 「あの…自分思ったんですけど、これ直で京子にあたるっちゅうのはいかんがですか?」 「直で?京子に?」 「はい。」 「だめや。」 「なんでですか。」 「だめなもんはだめ。」 「でも手っ取り早いですよ。椎名のやつが何やっとるんか知るには。」 …

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