105.2 第93話【後編】
3-93-2.mp3
「それが朝戸を鍋島にするってやつだったってか。」
「そう。」
「でも、すでにその実験は失敗に終わっている。その失敗続きのそれを、なんで朝戸にもって思ったんだ。」
「可能性をみたんだ。」
「可能性を見た?」
「うん。鍋島能力の発動の条件には膨大な負のエレルギーの蓄積ってのがあるんだけど、そのときの朝戸の感情の爆発は凄まじくってね。いままでに経験したことがないほどのものだったんだ。鍋島自身が抱えていた負のエレルギーも凄いけど、これも相当なもんだ。だから今度はうまくいくかもしれないって思ったんだ瞬間的に。」
「負のエネルギーか…。」
「ビショップ。君は当時の朝戸ほどの負のエネルギーは持ち合わせていない。東京で施術した対象の誰よりも負の感情を持っていない。」
「…。」
「そんな君に施術する…。いったいどういう結果がでるだろうね?ひひひ…。」
光定は不気味に笑い出した。
「あぁ…鍋島さん…僕に力を与えてください…。あなたはかつてこの場所にいた。ここで2人を殺した。そして同級生2人の人生をぶっ壊した。ここは聖地だ!お願いします…僕に、ビショップに、力を与えてください。」
急に宗教儀式めいてきた場の雰囲気と、狂乱ともいえる光定の様子に空閑は言葉を失った。
ーいいのか…俺…。
ー本当にこいつに自分のすべてを委ねていいのか…。
ーその術とやらが失敗したら俺はどうなる?
ー自我を保っていられるのか?
ーでも…ここで引き下がれるわけがない…。…