104.2 第92話【後編】

3-92-2.mp3 「鍋島!?」 「ええ。研究対象の鍋島能力。その保持者であった本人です。」 「な…なんで…こんなものが…こんなところに…。」 「天宮先生の手配です。ちょっと警察の方面に手を回してこういうことにしてくださったんです。」 「ば…ばかな…わたしはこんなこと聞いていない。」 腰を抜かしたまま小早川はホルマリン漬けになっている人間を仰ぎ見る。 筋肉質な体型を保ったままのシルエットは美しかった。 彼の視線は体の全体的なシルエットから各部へと移動する。 すると特徴的なものに気がついた。 「なんですかこの体は…。」 体のいたる所に縫合の後が見える。 「体だけじゃなくて顔も色々いじってたみたいですよ。」 「え…顔?」 そういうと小早川は鍋島の顔を見た。 「ひいっ!」 彼が驚くのも無理もない。 髪の毛ひとつないつるっぱげ状態の頭皮には無数の縫合の跡。 そしてぱっとみた感じきれいな顔立ちであるそれにも至るところに縫合の跡があった。 しかし彼を驚かせたのはこれではなかった。 鍋島の目は上瞼と下瞼が縫い合わされた状態だったのだ。 「な…なんで…目が縫い合わされているんですか…。」 「あぁそれはあれです。」 そう言うと光定は同じくホルマリン漬けされている別のガラス製の容器を指差した。 そこには2つの眼球があった。 「目…?」 「はい。鍋島の眼球です。それとその隣にある脳。これらが得意な能力、いわゆる瞬間催眠の発…

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104.1 第92話【前編】

3-92-1.mp3 「なんだってこんなところなんだ…。」 車一台がやっと通れるくらいの舗装されていない狭い道。 雨によってそれは泥濘んでいた。 ひょっとするとタイヤがスタックするかもしれない。 自身のない空閑は車を止め、その道を徒歩で進んでいた。 歩くこと数分。ようやく開けた場所に出た。 朽ちた小屋がある。 その側には車が止まっていた。 「四駆か…。」 扉を開く音 「遅かったね。」 暗がりに白いシルエットが見える。 白衣姿の光定だった。 「まぁ…。」 木床の軋む音 「ここは?」 「あぁ塩島一郎って爺さんの持ち物さ。ちょっと拝借したんだ。」 「いや、そういうことじゃなくて。なんでこんな熨子山の小屋なんかで。」 「熨子山って言ったら思い出さない?」 「え?」 「鍋島になるんだよ。君はこれから。」 「あ…。」 「そう。ここは9年前に起こった熨子山連続殺人事件のまさに現場さ。」 「ここが…。」 「ほら。いま立っているそこ。まさにそこで二人の被害者が鍋島によって殺された。ひとりはハンマーで撲殺。もうひとりはナイフで頸部をかっさばかれてね。ひひひ…。」 「おい…。クイーン…おまえどうしたんだ?」 「どうもこうもないよ。残念なんだ。君がどうしても鍋島になりたいっていうもんだからさ。」 「え?だって…おまえさっきあれほど嫌がってたのに。」 「嫌だよ。いまでも。またひとりナイトを誕生させてしまうかもしれないしね。」 …

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