第49話



「は?天宮が殺された?ついさっきトシさん直接調べとったんに?」
「おう。相馬が第一発見者や。」
「なんや…それ…。」

片倉は頭を抱えた。

「細かいことはあとでそっちに報告入るやろうし、そこらへんは置いとく。」
「あぁ…そうしてくれ…。」
「ひとつ興味深いことがあった。」
「なんや。」
「目の写真。」
「なに…。」
「目の写真が天宮んちの隠れたところの壁に貼られとったらしい。」
「なんじゃいや…それ…。」

通を歩いていた片倉は目の前に偶然飛び込んできた教会の姿を見つめた。

「あの目、そのものが神言うとったからな。天宮。」
「ふっ…隠れキリシタンって感じやな。」
「ほやな。ところで曽我の方はどうや。」
「一応会った。」
「どうやった。」
「なんや余裕のない感じやったぞ、あいつ。トシさんから聞いとった謙虚で正直な奴ってイメージはちょっと違うようやった。」
「ふうん…東一って環境が人をそうするんかな。」
「なんやそれ。」
「いや気にすんな。で曽我なんかおもろいこと言っとったか。」
「別に大したことは言っとらん。例のブツについては日頃の感謝の気持ちを定期的に形にしただけやって。」
「どういうこと?」
「天宮に世界各地の名産品とかを送っとったってさ。」
「はぁ?そんなもん今どき欲しいもんがありゃネットかなんかですぐに手にはいるがいや。」
「天宮はネットとかその手のことはとんとだめでいや。世界各地の名産品をマメに上納してくれる曽我を重宝しとったみたいねんて。」
「まぁ…たしかにその手のことはからっきしって奴はおるけど…。」
「んでネット系に疎い天宮はついでに曽我にこういうものも用意してくれと頼むようになる。」
「ほう。なんや。」
「ピンクや。」
「あらら…。随分とお盛んなようで…。」
「曽我からの定期便にはその手のブツも毎回あったみたいや。」
「ちゅうか、そんなことまで曽我の奴ばらしたんけ。」
「あいつなりの駆け引きなんじゃねぇの。恩師の弱みを第三者に握らせていざというときに使う。なんかよくわからんけど、そういう頭は回る人間みたいやな。」
「研究の功労者である光定でなくて、天宮の方にその手のもんを送ってゴマ擦っとると思えば、ちゃっかり弱みを握る。考えようによっちゃお前の言う通り、相当の狸やわな。」
「面従腹背。クソ野郎の部類やぞあいつは。」
「で、光定については。」
「優秀やって。」
「え?ほんだけ。」
「あぁほんだけ。多分触れたくないんやろ。あんまりあいつについて言及するとどこかでボロが出るかもしれんからな。いまでも緊密に連携をとってますってだけや。」
「ほうか…緊密に連携ね。」
「どうした?」
「片倉。ちょっと曽我マークせんけ。」
「曽我に何かあったか。」
「なーん。曽我と光定が具体的にどういうことで連携とっとるんか知りたいんや。実はこっちのほうは先に相馬に光定を探ってもらっとる。今日の夕方にもあいつに近い人物と接触する予定や。」
「仕事早ぇな。」
「特高ですから。」
「わかったこっちも曽我の周辺とりこんでみる。ちょっとだけ時間くれ。」
「ちょっとだけやぞ。」
「わかっとる。」
「ところで片倉。指示がある。」
「指示…。」
「あぁ。いまお前それ聞ける場所に居るか。」
「大丈夫や。なんや。」
「サブリミナル。」
「サブリミナル?」
「おう。無作為に動画を抽出してそいつを片っ端から調べてほしい。」
「例のアレか…。」
「あぁファッキンジャップ デストロイジャップ。んで目の映像。こいつがあの犀川のテロデマ映像以外にも入り込んどらんか調べるんや。」
「スタッフは。」
「そっちのIT担当とかできんか。」
「いやそれは無理や。あいつにはSNSの監視をしてもらっとる。」
「SNS?SNSがどうしたんや。」
「ほら池袋で信号待ちの群衆に高齢者が運転する車が突っ込んだ件でウ・ダバが犯行声明出したとかって話題になっとったがいや。」
「おう。」
「すげぇ勢いでその動画拡散されとったんやけど、いま改めてそれを見ようと思ったら該当する投稿が消えとるんや。」
「は?」
「うちのIT担当が言うには、どうも意図的にその手のウィルスをそこに流し込んだやつが居るらしい。このウィルスのせいで俺らはウ・ダバのもんやって決めつけとるネタ元を追えんようになった。」
「なるほど、ほんでお前んとこのIT担当がその監視をすっから動けんってか。」
「おいや。」
「んじゃ外注か…。」
「どこ使えんて。」
「心当たりがある。ワシの方で業者に話しつけとく。あとでお前んとこに連絡させるから、お前の方で話聞いて特高から正式に発注してくれ。あぁもちろん機密費で。」
「…間違いない先にしてくれやトシさん。」
「心配ない。」

電話を切った片倉はホームの壁に寄りかかった。

ー光定周辺は基本俺の単独捜査。サブリミナル調べんのも外注。んで方っぽうで特高の仕切り…。
ーさすがに心と体が悲鳴あげてきとる…。
ー俺の歳でやることじゃねぇかもしれんな…。

携帯震える

「はい。」
「片倉様ですか。」
「はいそうですが。」
「古田様のご紹介で電話しました。」
「あぁ…。」

ー早ぇわ…少し休ませてくれ…。

「HAJABの江国と申します。」
「HAJAB…。」

「ふふふ…おもしれぇ。おもしれぇよトシさん。」

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