第88話【後編】



携帯に通知が届いた。
即座に岡田はそれを開く。

「確かに残念な具合にハゲ散らかしてるな…。」

そう言うと彼はその画像を側にいた捜査員に転送した。

「いま画像送った。そいつをすぐに照会してくれ。」
「はい。」

マウスの音

「うん?」
「どした?」
「課長…この人…。」
「なんや。」
「自分知っとります。」
「は?」
「そっくりです…昔、自分、能登署におったときの相勤に。」
「サツカン?」
「いえ。今はヤメ警のはずです。」
「ヤメ警…。」
「念の為特高にでも照会とってみましょうか。あそこならすぐ対応できるはずです。」

捜査員は連絡を取ろうと電話の受話器をとった。

「待て。」
「えっ。」

「ワシをすっ飛ばして頭越しに直でやり取りする警察の誰かさんもさることながら、身近で世話してきたワシに悟られんように特高とコンタクトとっとった椎名にもがっくり来ました。」59

ー特高の片倉班長とは古田さんを介してしか俺らは基本連絡を取り合っていない。けど片倉班長とは意識の共有化ができとる。そん中で俺の部下であるマサさんをすっとばして椎名と直でコンタクトをとっとる特高の誰かが居る。その可能性が出てきた今、特高の中で妙な動きをしとる奴がおる…。
ーつまり特高にもモグラがおる。その中でいまここでこのハゲを特高に照会取るってのはどういう意味を持つんや…。

「課長?」

ー俺らがいま特高に照会しようとしとるこの行動自体が、このハゲの意図するところとかじゃねぇやろうな…。
ーもしそうやったとして、それはどんな意味を持つ…。
ー古田さんは千種と接触し、その千種は死んだ。それの一部始終をこのハゲが監視しとった。
ーなぜハゲはその現場を抑えとるか…。

「あの、課長?」

岡田には彼の声が聞こえていない。ひたすらに頭の中で考えを巡らせる。

ーただ単に古田さんを尾行しとったら、その現場に出くわした。そう考えることもできる。
ーでも、もしこのハゲが鍋島能力の分析を俺らがやっとることを知って、それを横から監視しとったんやとしたら、古田さんを尾けるというより、むしろ千種のことを尾けとった…。で、そこに偶然古田さんが接触してきた。
ーで、千種はなんかわからんけど走る車に自ら突っ込んで自殺…。
ー自殺?
ーえ…まて…。なんで自殺なんや。
ー鍋島に関する事件には自殺に見せかけたコロシの事例なんか普通にあったがいや。
ーほうや…このハゲ、はじめっから最後までそこの様子観察しとったんやったとしたら…。

「目付役か…。」
「え?課長?」
「その可能性も考えられる。で、確実に息の根を止めるところまで見てその場から消えた。」
「あの…自分どうすれば…。」

ようやく岡田は捜査員の存在に気がついた。

「あ…えっと…。」
「照会とります?どうします?」

ーあ…そうやった…。特高に照会取るかどうかやった…。

「…いまは止めておこう。」
「はい。」
「そのデータ消しておいて。」
「了解しました。」

ーでもあのハゲがそういう存在だったとして、なんで千種の様子を観察するとか、それを消すような真似をせんといかんがや…。

「まさか…。」

ここで岡田の動きが止まった。

「俺ら以外にも鍋島能力の分析をする勢力がおる。」

壁に向かってこうつぶやく中、先程の画像を側にいる捜査員が送信した。そのことを岡田は知る由もなかった。

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