第47話

3-47.mp3 何の応答もない。 ー留守か…。 手をかけて扉を引くと、それはすんなりと開いた。 ーえっどういうこと…。 「天宮さーん。すいませーん。」 返事がない。 「こんにちはー。天宮さーん。郵便でーす。」 確認のため再度呼びかけるも反応はなかった。 扉の隙間から見える玄関の様子は古田が言っていたとおりの散らかり様だ。 老年の男がひとりで生活を営んでるとは到底思えないほど種々雑多な履物類が散乱している。 男物の草履のようなものがあると思えば、若年層が履きそうなスニーカー類もある。 はたまた女性もののパンプスがあったり、ブーツのようなものもあった。 ーどれもいうほど埃をかぶっていないな…。それにしてもなんでこんなにいろんな靴があるんや。こんだけの人間がいっつもこの家に出入りしとるとも思えんし…。 とにかく鍵をかけずに留守というのは不用心極まりない。 だからといって無断で住居に入って、留守番をするなんてこともできない。 ー困ったな…。 相馬はその場で電話をかけた。 「あ、古田さん。」 「おうどうした。」 「いま天宮の自宅の前にいるんですが、留守なんです。」 「あ?もうどっか行ったか。」 「まぁたぶんそうなんでしょうけど、鍵空いとるんです。」 「え?」 「玄関扉に鍵かかっとらんのです。んで呼びかけても何の返事もないんです。どうします?」 「不用心な…。部屋の散らかり様もそうやけど、そこんところま…

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第46話

3-46.mp3 「え?古田さんが?」 「あぁ、天宮のヤサで聴取しとったところ、あまりにもしつこいとかでPSに苦情が入って、PMが乗り込んだらしい。」 「本当ですか…。」 岡田ため息をつく。 「しかし古田さん、天宮の聴取って…。ここで随分思い切った行動を取りましたね。」 「だな。それで収穫があればいいんやけど」 「まぁ…。」 「何事にも慎重を期するあの人らしくない。何か焦っとるようにも思えるな。」 「不要な予算をマルトクに付けとる。なんて大蔵省が評価したら、せっかく充実させた安全保障関連の予算も見直しが必要とか言って、あいつら至るところにメスを入れかねん。」 「もしもそうなると安全保障予算を引っ張ってきた族議員は、その顔を潰されることになり、ひいては関係業者、団体の期待を裏切ることとなって、票を失うなんて心配もせんといかんくなる。」 「政治家と大蔵省の睨みがきつくなった警察は、世論という勢力を味方につけるため、彼らが最も納得する対応をする。それがツヴァイスタンやウ・ダバをとにかく取り締まれというもの。ここに乗っかって政治家と大蔵省からのプレッシャーを切り抜けようと考えた。」 「なんねんてそれ…。そもそもマルトクはそういう他からの干渉をなくして治安維持活動に専念できるようにって目的で設立された部署やぞ。」 「でも金がなくなればウチらは干上がります。」 「目に見える成果…か。」 「はい。」 「…しかもはよせんといかん訳やな。」 「おそらく。」36 …

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第45話

3-45.mp3 「で、どのタイミングで…。はい。了解しました。あぁ椎名ですか…。あいつは相変わらず何の動きもないようです。…確かに油断は禁物ですね。で、例の件は…なるほどこちらにお任せいただけるんですね。」 電話を切った古田はポリポリと頭を掻いて帽子をかぶり直した。 その帽子には大手配送会社の会社ロゴが刺繍されている。 「さてと…。」 インターホンを押す音 「はい。」 「宅配便でーす。」 玄関ドアが開かれた。 「天宮憲行(のりゆき)さん?」 「はい。」 「警察です。」 「え?」 すかさず古田は自分のつま先を玄関ドアの開いたところにねじ込んだ。 まるで昭和の押し売りのような強引な振る舞いに天宮は言葉を失った 帽子を脱ぎ、胸ポケットから警察手帳を取り出した古田はそれを彼に見せた。 「光定公信さんについてお聞きしたいことがあります。ご協力いただけますか。」 「…ありえない。なんて乱暴な。」 「私は法を犯すようなことは一切行っていませんよ。」 「…取り込み中です。日を改めてくれませんか。」 「何を待ってたんですかね。」 「何のことですか…。」 「何か待ってたんでしょ。ほやから宅配便の受け取りにあんたが直接出た。」 「家には私しかいません。」 「あれ?奥様は。」 「もうここにはいません。」 「あぁ…そうですか。それはそれは…。」 玄関先で話し込む古田の様子を怪訝な様子で見る隣人の姿が、天宮の目に映った。 …

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